最近のアニメを見ていると、やたらと「異世界転生」や「異世界転移」が増えたと感じる。
広義で言えば、『ソードアート・オンライン(SAO)』や『オーバーロード』『ログ・ホライズン』『盾の勇者の成り上がり』のように「VRMMOやオンラインゲームの世界に意識や肉体ごと閉じ込められる」作品も同ジャンルの系譜だろう。今や「転生・転移」はヒット作を作るための当然のプロット(お約束)になっている。
俺たちおじさん世代で言えば、『機動戦士ガンダム』に代表されるリアルロボット路線のアニメが主流だった時代を思い出すが、今の若い世代にとっては異世界ファンタジーこそが標準フォーマットなのだろう。
もちろん、作り手がゼロから完全に新しい世界観を構築するのは今の時代極めて難しい。結果として作品ごとの見応えがどんぐりの背比べになってしまうのも、ある意味では仕方がない。
だからこそ、今の若い連中には「そのジャンルの元祖・原点」を知ってほしいと思うのだ。音楽もそうだが、全く新しいものを作るのが無理なら、過去の優れた名作をリスペクトし、現代の技術で昇華させた方が圧倒的に良いものができる。これはコンテンツにおける一つの原理原則だ。システム開発もまったく同じである。
異世界転生・転移の元祖『聖戦士ダンバイン』
今回取り上げたい元祖は、ガンダムの総監督であり「皆殺しの富野」とも呼ばれる富野由悠季監督が手がけた『聖戦士ダンバイン』だ。作品の放映は1983年。今から40年以上も前の作品である。
当時のサンライズと富野監督の流れを振り返ると凄まじい。
社会現象となった『機動戦士ガンダム』の後、作中の登場人物をほぼ全員死なせるという伝説の暴挙に出た『伝説巨神イデオン』を制作。そこから一転してコミカルで泥臭い西部劇風の『戦闘メカ ザブングル』を作り、その次に世に放たれたのがこの『聖戦士ダンバイン』だった。
スポンサー(玩具会社など)からの意味不明な要求すら強引に作風にねじ込みつつ、作品を成立させてしまう富野監督のバイタリティ。「もうガンダムの焼き直しは作りたくない」という強烈な作家性が、これらの作品群からはビンビンに伝わってくる。
当時中学生だった俺様は、「バイストン・ウェル」という中世ヨーロッパ風の異世界に、モトクロスに乗った現代の日本の若者(主人公ショウ・ザマ)が召喚されるという設定に度肝を抜かれた。「なんじゃこりゃ、ロボットアニメで異世界転移ってなんだよ」と思ったものだ。
登場するメカ「オーラ・バトラー」も、従来の角ばった超合金ロボとは真逆の、巨大な昆虫や甲殻類を解剖・加工したような生体兵器。翅(はね)を生やして空を飛ぶそのデザインはあまりに先鋭的すぎて、当時のメインスポンサーであった玩具メーカー(クローバー)の立体化技術や販売戦略とは噛み合わず、商業的には苦戦を強いられた。
さらに物語後半では、バイストン・ウェルの戦火が現実世界(地上界)へ浮上して国家間の大戦争に発展し、最後は登場人物のほとんどが散っていくハードな結末を迎える。
平たく言えば、「時代を先取りしすぎて当時の世間が追いつけなかった名作」というのが俺様の評価だ。
死んでいたコンテンツを蘇生させたサミーの功績
時は流れて2000年代初頭。俺様は4号機全盛期、初代『パチスロ北斗の拳』などで飲み代を稼ぐような日々を過ごしていた。飲み仲間に「エヴァ原作知ってるとエヴァパチ負ける」と喧嘩を売られたら買うしか無いということで最初はパチから入り、その後スロにどっぷりハマる。当時六本木ヒルズ勤務の大手ITベンチャーに常駐するSE兼プログラマとして働いていたが、頭の8割はスロで飲み代を稼ぐことしか考えていないアホだった(笑)。
だからこそ、最近のスマスロが「一撃数千枚出ます」などと謳っていても、設定や店側の都合に素直に従うだけの現代の台を知ってしまうと、4号機のあのキレと時給効率を知る人間としてはリアルホールで打つ気が失せてしまう。
ただ、パチンコやパチスロの演出そのものは好きなので、サミーが運営するオンラインゲーム「777TOWN」で往年の名機を回して遊んでいる。
その中で「えっ、今さらダンバイン!?」と驚きつつ回したのが、2015年にサミーから出た『ぱちんこCR聖戦士ダンバイン』だった。そして一発でハマってしまった。
パチンコ化によって死んでいたコンテンツが息を吹き返した例としては、『新世紀エヴァンゲリオン』や『牙狼』が有名だ。パチンコマネーと演出による再評価がなければ、エヴァの新劇場版シリーズが作られることも、牙狼が長期シリーズ化することもなかったはずだ。これが現代のコンテンツビジネスのリアルである。
そんな中でも、サミーが手がけた『CR聖戦士ダンバイン』の仕上がりは群を抜いていた。
当時のパチンコ界を震撼させた圧倒的な消化スピード(ダンバインRUSH)の爽快感はもちろんのこと、原作の古臭さを徹底的に払拭し、現代のエンタメとして昇華させるために以下の工夫が凝らされていた。
- 液晶映像の完全フルリメイク
当時のセル画の味を残しつつ、現代のCG技術でハイクオリティに再構築。 - オープニング曲「ダンバイン とぶ」の新規録音
MIO(現:MIQ)本人がこの台のためにボーカルをリテイク。 - 強力なオリジナル楽曲の起用
大当りラウンド用に若手アーティストを起用した「闘志天翔」など、疾走感あふれる神曲を制作。 - 原作セリフの演出昇華
ショウ・ザマが敵を切り裂く際の口癖「落ちろよー!」を、大当り確定の脳汁トリガー演出(パチやスロをやらん人にはわからんが、歓喜の表現が脳汁出る、だ)へと見事に定着させた。
バトル演出を作らせたら右に出るものがいないサミーの開発力が遺憾なく発揮された名機だ。時給効率も出玉性能もあまりに高すぎたため、リアル店舗ではすぐに釘をガチガチに締められたのも納得のスペックだった。
まずは元祖を見てみよう
最近の異世界アニメは作画も綺麗で観やすいが、もし異世界転生・転移ものが好きなら、一度はその原点である『聖戦士ダンバイン』を観ることを強くおすすめする。
現在でもU-NEXT等の配信サービスでデジタルリマスター版が視聴可能で、大画面テレビで見ても作画の粗さを感じさせない鮮明な映像とステレオ音響で楽しめる(ただし画面比率4:3なのはご愛嬌だ)。
音楽や文学と同じで、「今流行っているもの」の面白さや構造を深く知るためには、そのルーツとなった過去の偉大な作品を知ることが何よりの近道だ。40年以上前にこれだけの世界観を描いていた富野由悠季というクリエイターの狂気と凄みを、ぜひ一度体感してみてほしい。
