トークボックスが吼えるスタジアムの支配者――Bon Joviが刻んだ王道大所帯ロックの真実

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薄暗いライブハウスの片隅で、誰にも理解されないような難解なコード進行や、陰気な歌詞をボソボソと歌うインディーロックを聴いて「これこそが高尚な音楽だ」などと斜に構えているスノッブどもを見ていると、俺様は心底反吐が出る。音楽の快楽とは、小難しい講釈を垂れることじゃない。何万人もの人間がひとつの巨大なスタジアムに集まり、拳を天に突き上げ、全員で同じサビを叫び散らす――その圧倒的な熱量と一体感こそが、ロックという芸術の絶対的な頂点だ。

その頂点を四半世紀以上にわたって極め尽くし、世界中のアリーナを揺るがし続けてきたモンスターがいる。

ボン・ジョヴィ(Bon Jovi)だ。

音楽評論家気取りの連中は、彼らの突き抜けたキャッチーさを「商業主義」「産業ロック」などと安全圏から揶揄してきた。だが、世界で1億3000万枚以上のアルバムを売り上げ、何世代にもわたって世界中のスタジアムを満員にし続けることが、どれほど狂気的な才能と鉄の規律に支えられているか、あいつらは何一つ理解していない。王道中の王道であり続けたこの大所帯バンドの凄まじい実力を、俺様が骨の髄まで叩き込んでやる。

ニュージャージーの労働者階級から世界の頂点へ――バンドの歩み

ボン・ジョヴィの原点は、1983年のアメリカ・ニュージャージー州にある。フロントマンであるジョン・ボン・ジョヴィが、従兄弟のレコーディングスタジオで雑用係として働きながら、夜な夜なデモテープを録音していた泥臭い下積みからすべては始まった。

ラジオ局のコンテストをきっかけにチャンスを掴んだジョンは、盟友となるギタリストのリッチー・サンボラ、キーボードのデヴィッド・ブライアン、ドラムのティコ・トーレス、ベースのアレック・ジョン・サッチを集結させ、バンドを結成する。ハードロックの骨太なエナジーに、誰もが一度聴けば歌える哀愁のメロディ、そして洗練されたポップセンスを融合させた彼らのサウンドは瞬く間に火がついた。

そして1986年、サードアルバム『Slippery When Wet(ワイルド・イン・ザ・ストリーツ)』が世界中で大爆発を起こす。ビルボードチャートで8週連続1位を獲得し、世界中で2800万枚以上を売り上げる歴史的メガヒットを記録。泥臭いアメリカの地方都市から這い上がった5人の若者が、名実ともに惑星最大のロックスターへと駆け上がった瞬間であった。

「Livin’ on a Prayer」の衝撃――ギターが喋るトークボックスの魔術

そのアルバムの核となり、ロック史に永遠に刻まれるアンセムとなったのが、言わずと知れた名曲「Livin’ on a Prayer」だ。

この曲のイントロを耳にして、全身の毛穴が開かない人間などこの世に存在しない。「ウーワ、ウーワ」と、まるでエレキギターが人間の声で怪しく言葉を喋っているかのようなあの異様なトーン。あれこそが、リッチー・サンボラが操る伝説のエフェクト装置「トークボックス(トーキング・モジュレーター)」の真骨頂だ。

ギターアンプからの強烈な信号をスピーカーではなく小型ドライバーへと送り込み、口にくわえたビニールチューブを通じてギタリストの口腔内に音を響かせる。そして口の形を変えることで母音の響きを変化させ、それをボーカルマイクで拾い直すという、極めてアナログで肉体的な仕掛けだ。

ただエフェクターペダルを踏むだけでは絶対に作れない、人間の肉体と電子回路が物理的に連結した生々しい音のうねり。リッチーはこの無骨な機材を完璧に手なずけ、イントロの数秒だけでスタジアムの空気を一変させる奇跡のフックを生み出したのだ。生活に喘ぐ労働者階級のカップル、トミーとジーナの過酷な日常を描いた切実な歌詞が、あの蠢くようなギターサウンドと重なった瞬間、楽曲はただのポップソングを超えて、世界中の名もなき庶民たちの魂の賛歌へと昇華したのである。

スタジアムを支配する「王道の大所帯バンド」の完成形

ボン・ジョヴィが他のハードロックバンドと決定的に一線を画していたのは、フロントマンとギタリストの2人だけに依存しない、極めて重厚な「大所帯バンド」としての構築美にある。

デヴィッド・ブライアンが奏でるクラシカルで華やかなピアノやシンセサイザーのレイヤーは、ギターの轟音に埋もれることなく楽曲にドラマチックな陰影を与え、ティコ・トーレスの重戦車のようなドラムはスタジアムの最後列までビートを叩き込む。さらに重要なのが、リッチー・サンボラをはじめとするメンバー全員による分厚く強烈なコーラスワークだ。

リードボーカルの後ろで何重にも重なり合うコーラスの壁は、サポートメンバーやブラスセクション、パーカッションを巻き込んだ大所帯編成によってさらに巨大化し、何万人もの観客が合唱するための強固な滑走路を用意する。緻密な音響工学と、一切の隙がないアンサンブルの構築。彼らの鳴らす音は、広大なスタジアムという空間を余すところなく埋め尽くすために徹底的に設計された、王道ロックの最高到達点なのだ。

ペースは落ちても、奴らは決して引退などしていない

長年バンドの屋台骨を支えてきたリッチー・サンボラの脱退や、フロントマンであるジョンの深刻な声帯手術など、近年のボン・ジョヴィを取り巻く環境は決して平坦なものではなかった。かつてのように世界中を休みなく駆け巡る過密なツアー活動からはペースを落とし、活動の露出が落ち着いているのは事実だ。

だが、勘違いするな。彼らは決して引退などしていない。

ジョンは過酷なリハビリと声帯手術を乗り越え、自らの衰えや苦悩すらも隠すことなくドキュメンタリーで晒し、2024年にも渾身のアルバム『Forever』を叩きつけて健在を証明した。傷だらけになりながらも、再びステージに立ち、ファンに向けて歌を届けることへの執念を燃やし続けている。

小綺麗にまとまった若手バンドや、過去の遺産を食いつぶすだけの亡霊どもとは覚悟が違う。時代がどれほど移り変わり、デジタル配信が音楽を記号化しようとも、彼らが鳴らしてきた大所帯のスタジアムロックと、魂を揺さぶるアンセムの数々は1ミリも色褪せていない。

斜に構えて本物の熱狂から逃げている連中は、今すぐ「Livin’ on a Prayer」を最大音量で鳴らしてみろ。あの喋るギターの咆哮を浴びた瞬間、理屈や能書きなどすべて吹き飛び、拳を握りしめて叫ばずにはいられなくなるはずだ。

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